AMC Clinical 私の勉強法とよくある落とし穴4選
皆さんこんにちは!Marieです。
今日はAMC Clinicalの勉強法について、私が具体的に何を使ってどのように勉強したかを紹介します!AMC Clinicalに関しては、日本語で多少の情報はあれど、その具体的な勉強法を紹介した日本語ブログはこれが初だと思います。
このブログが多くの皆さんの参考になれば幸いです 🙂
注)記事は基本的に自分の経験をもとにしているものです。詳細な内容などに関しては、必ず公式サイトを参考にしていただくようにお願いします。記事は投稿当時の正確な情報を記載するように心がけていますが、この記事を参考にして起きた不利益については一切責任を負いません。
はじめに
試験の概要はこちらのブログからどうぞ
AMC Clinical… 英語で勉強法のコツを紹介しているブログや動画は見かけますが、英語で情報を得ようとするとかえって様々な勉強法がヒットして、情報過多で何をすれば結局良いのかがわからなくなりかえって混乱をします。
最近はオーストラリアでStandard Pathwayで医師になりたい人が少しずつ増えていると体感しています。5年前まではClinicalを受験する日本の医学部卒業生は本当に少なく、5年に1人いるかいないか位の頻度でしたが、ここ最近は数年に1人か2人ぐらいは受験していて、オーストラリアで医師を目指す人たちがじわじわ増えるに伴い今後Clinicalを受験したいと考える人たちも増加すると予想しています。私が昨年合格してからClinicalはどのように勉強すれば良いのかという相談をいただくようになりました。
というわけで、今後Clinicalを受験される皆さんのスタンダードを築くべく、今回このブログを書くことにしました。何をやって良いのかわからない、結局どうすればいいのかがわからない、そういう方の参考に少しでもなれば幸甚です。かなり長文ですが、概略はpodcastを聞いていただくとより深く理解ができるかと思いますので、ぜひPodcastのエピソード7 ‘AMC Clinicalの勉強法’も併せてお聞きください。
まず前提
私はClinicalは予備校に通って勉強をしていました。個人での情報収集には限界があると感じて、予備校に勉強法をガイドしてもらおうと思ったのが動機です。私は当時仕事をしていなかったので、予備校は9時から17時までみっちりと週6回10週間授業があるコースを選択しましたが、コースや予備校も様々あるので自分の生活スタイルに合ったものがあると思います。もし適切な勉強法がわかっていて適切な教材を持っていれば、人によっては予備校には通わなくても合格できる試験だとは思いますが、私はスケジュールがないと結構だらけてしまう方なので、予備校で管理されている方が勉強し集中しやすかったです。
Clinicalはインターネット上に大量の教材が溢れていますが、結局私が使用したのは、予備校の授業のノート、予備校の授業をもとに自分で作成したノート(主にクラスターの型、鑑別診断、身体診察の順番をまとめたもの)、公式ハンドブック、YouTubeのビデオ(主に身体診察の手技を見るため)だけでした。下にも書きますが、先人がまとめた過去問集(Karen NotesやMarwan Notes)は私は一度も使用しませんでした。
次に、自分の試験受験状況と成績についてですが、自分は2022年2月に勉強を開始、2022年7月に試験を受験し1回目で無事合格しました。14ステーションのうち11つに合格。合格した10ステーションのうち7点満点を取ったのが1つ、6点が4つ、5点が3つ、4点が3つ。不合格だった3つはいずれも3点でした。あまり自分で言うことでもないですが、6点以上を5つ取るのは本当に珍しいと予備校の校長に買われ、病院に就職するまでClinicalの講師をしていました。
また自分が受験したのは対面の試験ですが、もともと6月初めまではオンラインの試験に向けて勉強しており、直前1ヵ月で対面の試験対策に切り替えをしました。 オンライン試験はコロナの関係で導入された形式なのでいつまで採用されるか分かりませんが、形式は多少違えど大まかな勉強法は一緒だと思っています。もしオンラインの試験が今後も続くようなら、いつかオンラインと対面の試験の勉強対策の違いなどについてもブログに書こうかなと思います。
今から勉強する人向けのアドバイスですが、まず必ず試験要項を読みましょう。試験要項には大切なことがたくさん書いてあるのですが、残念ながら試験要項を読まないために遠回りした勉強法をする人がたくさんいるのがこの試験です。どの試験でも大切な傾向と対策を理解するためにも、試験要項を一読することをお勧めします。2023年7月現在の試験要項はこちら。
私の具体的な勉強法
具体的な勉強法は、
1.クラスターの型を身に付ける
2. 鑑別診断をすらすら言えるようにする
3. ひたすら具体的なシナリオで練習
4. 身体診察ステーションはとにかく練習、練習、練習
この4つに尽きると思います。
1. クラスターの型を身に付ける
Clinicalでは、多くの人が「クラスター」と呼ばれるものに基づいて勉強します。このクラスターは、似たような種類の問題をまとめる大枠みたいなイメージで、例えば「胸痛」「不正出血」「乳児の体重減少」「泌尿器系の異常」などという感じの分かれ方をしています (胸痛や不正出血などの症状ベースのクラスター、乳児の体重減少などの徴候ベースのクラスター、泌尿器や血液内科などの診療科ベースのクラスターがあるのが、特殊かなと思います)。それぞれのクラスターに対して、病歴の取り方、身体診察の仕方、鑑別疾患、そして問題ごとの疾患のおおまかな知識を勉強します。Clinicalではこのクラスターごとに勉強すると言うのは非常に大切で、なぜかというと採点基準はクラスターごとに型通りに問診や診察、そして患者への診断説明ができているかどうかで作成されているからです。
ここで少し採点基準についてお話します。Clinicalでは採点官はオーストラリアの各科専門医で、1ステーションに一人います。彼らはタブレット端末を持っていて、受験者のパフォーマンスを見ながら、画面にある採点基準のチェックボックスをチェックしていきます。一つのステーションには2つから5つの ‘Domain’ と呼ばれる採点領域があります。このドメインには
患者/親族へのアプローチ
病歴聴取
身体診察の選択とテクニック、体系そして順番
診断/鑑別診断
検査事項の選択
マネジメント
患者へのカウンセリング/患者教育
などが含まれます(試験要項と私の得点表を参考にMarie訳)。それぞれのドメインが7点満点で採点されます。その後、採点官がそのステーションの’Global Rating’ つまりは最終得点を7点満点でつけます。このグローバルレーティングをつけるときには ‘Predominant Assessment Area’ の点数が考慮されます。各ステーションに一つ「大事なドメイン」があって、
病歴聴取 (History Taking)
身体診察 (Examination)
診断/鑑別診断 (Diagnostic Formulation)
マネジメント/患者へのカウンセリング/患者教育 (management/counselling/education)
の4つのうちどれかです。ここでは詳しくは解説しませんが、試験要項に色々書いてあります。
というわけで、採点基準のチェックボックスをどのくらいカバーできたかがドメインの点数決めに考慮されるのは間違いないはずです。このような採点基準であることから、各ステーションにある程度決まった「型」があることも説明がつくと思います。だからとにかくこのクラスターの型を徹底的に身につけることが大切です。
イメージが湧きづらいと思うので、私の実際の得点表を載せてみます↓症例の特定を避けるため、シナリオ名とステーション番号は伏せてあります。
2. 鑑別診断をすらすら言えるようにする
さて型が大切と強調しましたが、もちろん一つの型の中の全ての問題でまったく同じ質問をバカの一つ覚えのように聞けば良いと言うわけではありません。同じ胸痛というクラスターでも、16歳女性と82歳男性では聞く質問が変わるのは当然です。ここで、どのような質問をするのかを決める判断基準になるのが、自分が持っている鑑別診断です。Clinicalで見られているのはGeneral Practiceを行う力です。病歴と心電図が与えられていて下壁梗塞を選べるかが試されているMCQのような試験とは逆で、まずは広い視点でたくさんの鑑別診断を考えながらオープンに質問し、問診の中で鑑別診断を除外ないしは考慮するために適切な質問をしていくという (言ってみれば当然の) ことが試されているのがClinicalです。なので「胸痛」と言われたときに鑑別診断が15-20個くらい浮かぶようにひたすらトレーニングするのが大事です。Clinicalでは問題文がだいぶ長い上に問題文を読む時間は2分しかないので、問題文を読んでいる最中に鑑別診断をゆっくり考える時間がありません。反射神経的にばばばっと言えるようになるまで、私はひたすら鑑別診断の列挙を繰り返しました。
さて、ここまで至極当然のことを言っていますが、ここで落とし穴になるのが、この鑑別診断はおそらくAMCの定めるルールがあるということです。これが結構特殊です。具体例を出して説明します。例えば16歳女性の突然の胸痛の問題が出たとします。問診では特に循環器系のリスクはなく、もっとも疑われる疾患が自然気胸だったとしましょう。 この時に、タスクの1つに「鑑別診断をあげよ」というタスクがあったとしたら、 どんなに可能性の低い(一見馬鹿げた)鑑別診断であっても、その鑑別診断を言い、なぜそれが疑わしくないのかを言う必要がある、というのがAMCのやり方です。この例では心筋梗塞は病歴から疑われませんが、それでもClinicalでは実際に口に出して「年齢と循環器リスクがない病歴から心筋梗塞は疑われない」と あえて言う必要があります。AMCの言う「鑑別診断」とはその特定のシナリオの鑑別診断ではなく、そのクラスターの鑑別診断であるというのを理解する必要があります。 AMCでは口に出していない事は考えていないとみなされると言うのは強調に値すると思います。これはかなり特殊で、特に医師として長く働いたことのある受験生はかなり苦戦している点でした。
3. シナリオでひたすら練習をする
個人的にはクラスターの型と鑑別診断がすらすら言えるようになり、ある程度主要な疾患の病状説明ができるようになれば、この試験はかなり合格に近づくと思っています。 しかし、やはり具体的なシナリオで練習をしないと、なかなか実際の試験ではアウトプットができません。とにかく練習をすることには大切な理由は2つあって、
1. 学習したクラスターの型と鑑別疾患をできるだけ条件反射的に口から出せるようにするため
2. 8分という短い時間内でステーションが終えられるようにタイムマネジメントの感覚をつかむため
です。 Clinicalの過去問集をまるまる記憶することには全く意味がないと個人的には考えていますが、ただ上に挙げた2つのことを練習するには過去問や具体的なシナリオで練習するほかないです。公式ハンドブックはここで初めて使用しました。公式ハンドブックと手に入れた過去6ヶ月くらい使って、ひたすら数人のスタディーパートナーと練習しました。
公式ハンドブックについてですが、AMC MCQと同じく、古い本ですが取り組んだ方がいいです。運が良ければ同じ問題も出題されることがあります。また、ハンドブックはAMCが公式にポイントを教えてくれている唯一の本なので、ハンドブックにあるポイントは意識していました。ところが、クラスターを勉強する前に読んでもぶっちゃけさっぱり内容がわからない(私は少なくともそうでした)ので、1と2のステップが終わる直前くらいに読み始めるのが、個人的には肌に合っていました。clinicalの公式ハンドブックも現在はAMCのサイトからは購入できませんが、各種予備校で購入できます。
4. 身体診察ステーションはマッスルメモリー:とにかく練習、練習、練習
Clinicalには2-5個くらい身体診察のステーションが出ます。これは対面では実際に模擬患者に身体診察を行い、オンラインでは身体診察の手順を医学生に口頭で説明をするステーションです。身体診察についてはプール問題が大体60問くらい(対面試験)あって、それをひたすら練習しました。身体診察のステーションでも採点基準は同じですが、適切な診察手技を選択できているか、体系立って診察できているか、診察の順番などが採点基準に含まれています。
身体診察に関しては、対面試験では例えば16歳女性でも82歳男性でも主訴が胸痛なら「循環器系とそのほか関連する診察をしなさい」という出題のされ方なので、循環器系の診察を覚えれば良いだけのことです。対面で受験する人に関しては、 採点は適切な手技の選択よりは診察の正確さや順番等が評価されている印象があって、身体診察のステーションはマッスルメモリーのようなところがあると思っています。実際の試験ではかなり緊張して、思うように実力が発揮できなくなる人も多いと思うので、私は身体診察はひたすら筋肉が覚えるまで夫や友人を使って練習をしまくりました。手技の正確性も大事な採点基準なので、YoutubeでTally + O’Connorのビデオや整形外科領域はPhysiotutorsなどを参考にしていました。診察中に所見を口に出して言わないといけない通称 ‘Running Commentary’ の仕方などもかなり練習しました。
オンラインの試験では、各シナリオに対して適切な身体診察手技を選択できるかに重きが置かれている印象があります。例えば長いけど最後まで読めばもっともらしい診断が肺塞栓/DVTだとわかるような直接的なシナリオが出題されて「適切な身体診察の方法を医学生に説明しなさい」といった具合です。 結局は呼吸器系の診察に加えて肺塞栓とDVTの診察をおこなえばいいだけの話ですが、対面に比べるとマッスルメモリー度は下がると思います(とは言ってもやはり身体診察のステーションはマッスルメモリーで得点できることには変わりないと思います)。 身体診察のステーションは身体が覚えればかなりの得点源になるので私は直前の1ヶ月で詰め込みました。
というわけでまとめると、自分の場合は2023年2月から勉強を始めて、
5月までかけてクラスターの型と鑑別疾患を勉強(このときにはまだあんまり頭に入っていません)
5月から受験日の7月後半まで2ヶ月ぐらいかけてクラスターの型と鑑別疾患がとにかく口から条件反射的に出てくるようになるように、毎日ひたすらシナリオで練習
最後の1ヵ月は、試験の採点方法(domain, Global Rating, Predominant Assessment Areaなど)の理解を深めてそれに合わせて得点が伸びるようにシナリオの練習をしたり、身体診察をひたすら練習しました。
最後の1ヵ月ぐらいは、もうとにかく早く受験をしたくなって、精神的にしんどかったです。
自分が勉強したときには大体クラスターは、内科外科で25個、小児科で20個、産婦人科と精神科は15個ずつくらいあり、勉強したシナリオは600くらいでした。身体診察は上にも書いたように60問くらいのプール問題を対策しました。
よくあるイケてない (と私が思う) 勉強法
最初にもちらっと書きましたが、英語で情報収集をするととにかく有象無象で、色んな人が色んなことを言っています。そのため、結局何が本当で何が大事なのかを見定めるのに、本当にとにかく時間がかかりました。何しろ、この試験は合格率が20%から30%位の試験です。 10人が勉強していれば7, 8人は不合格になるわけで、巷に出回っている勉強法の中には全く信頼がおけないものもあります。多くの人がこの試験を複数回受験することになる中で、私は当日の問題運もありながらなんとか一発で合格でき、その後予備校でClinicalの講師をしながら色々な同志・生徒を見てきました。今だからわかる、おそらくこれはイケてないのではないかという勉強法をいくつか書いてみますので、参考にしていただければ幸いです。
1. 何よりもまず最初に過去問に着手する
これはおそらく今でも50%位の受験生がとっている方法ではないかと思います。Clinicalの勉強法をネットで調べると、やれKaren Notesをやれ、やれDr○○の過去問集をやれだの出てきます(Karen Notesというのは昔に誰かがまとめた過去問集で、現在他にも○○ Notesという過去問集が多く存在します)。繰り返しですが、Clinicalの採点基準は、主訴に対して適切な型で適切な鑑別疾患を頭に浮かべながら適切な質問ができるかどうかです。今でも過去問を1000問くらい頭に入れていて、10歳女児の頭痛と聞いただけで「それは緊張型頭痛の問題だよね!」などと言う人がいます。暗記力は凄すぎるのですが、その文脈のないものの暗記力は残念ながらClinicalでは不利になると思います。
型を勉強する前に最初に過去問に着手しない方が良い理由は、思考回路が過去問ベースになってしまい、後から一見似た問題に当たったときに超バイアスが入った病歴を取ってしまいがちだからです。2010年後半の一例を挙げます。「78歳女性、主訴:尿失禁」という問題がありました。この問題はある日まで全ての問題が腹圧性尿失禁の問題でした。 多くの受験生もそれを知っていたので、「78歳の女性の尿失禁の問題は腹圧性尿失禁だよ」という形で広まりました。ある日AMCがシナリオを変えずに診断を混合性尿失禁に変更して出題した日がありました。 当然過去問ベースで勉強している受験生は腹圧性尿失禁に関連した病歴しか取れず、ほとんどが不合格になりました。
また、過去問ベースの勉強はpremature diagnosisにもつながります。premature diagnosisとは「病歴聴取と身体診察で他の鑑別診断を除外しないまま、診断を決定する」ことです。例えば実際の試験で先ほどの10歳女児の頭痛の問題が出てきて、過去問から緊張性頭痛の問題だ!と問題文を読んでいる時点でわかったとしましょう。いざ問診では緊張性頭痛に関連した質問ばかりして、他の鑑別診断(偏頭痛、感染症、視力障害etc.)を除外する質問を全くしなかったとします。それで最後に「あなたの頭痛はおそらく緊張性頭痛です」と言っても、鑑別診断をしっかりと除外できていないその状況においては、reasoningがあまりに弱すぎるのです。緊張性頭痛と視力障害の両方が頭痛の原因になっている場合もあるわけなので、このようなパフォーマンスをすると’premature diagnosisだ’というわけで即刻不合格になります。だから型と鑑別診断が大事なんですね。
もう一つ特別特筆するべきなのは、Clinicalは決して正解不正解と言う側面で採点をしていないと言うことです。それぞれの過去問のシナリオには、もっともらしい診断名が一応あることになっています。しかしその診断名が仮に間違っていたとしても、型通りに診察をしてその人なりにしっかりとした理由付けでその診断に至ったと言うことを採点官きっちりと説明をすれば、そのステーションは合格になることが多いです。そのため、過去問でこの診断が正解、この診断は不正解、というような勉強方法をとるのは意味がないと思っています。
2. 最初から時間にシビアに練習する
もちろん実際の試験では時間内にすべてのタスクを終わらせる事は必須なのですが、練習の最初から2分で問題文を読んで、8分でステーションを行うのを意識しすぎる人たちがいます。時間のプレッシャーは半端ないので、はじめからこの方法をとってしまうと、型や鑑別診断を記憶から引っ張り出してくると言う基本的なアウトプットができないまま練習が進むことになります。 私は勉強している時、最初の方は時間制限や試験形式にとらわれずに、問題文を読んだ後に鑑別診断を紙に書き(実際の試験では紙には書けません)、実際に練習をしている時も大体20分くらいの時間をかけながら、抜けのないように型通りにパフォーマンスすることを意識して練習していました。だんだん自然と型や鑑別疾患が口から出てくるようになるので、そこからだんだん時間を短くして、最終的に1分半と7分半という時間制限で最後練習を繰り返しました。
3. 一つ一つの疾患の病態あるいはマネジメントに異様に注力をする
これもよくあります。 Clinicalではまずそもそもマネジメントが聞かれる問題は3から4問ぐらいしかないです。 また試験要項には、はっきりと「この試験は医学生最終学年レベルの試験だ」と書いてあります (個人的には初期研修医レベルくらいじゃないかと思っていますが、超ジュニアドクターレベルということに変わりはないです)。 つまり学生、初期研修医がマネジメントできる範囲の事しか出題されないと言うことです。Clinicalの勉強をしている人の中には、出題されたことのある一つ一つの細かい疾患に対して、病態や疫学、具体的な治療法まで全部を勉強し暗記したがる人がいます。 個人的には、おそらく出題されないであろうマネジメントを勉強するのは正直時間の無駄かなと思います。
例えば、もっともらしい診断名がIgA腎症という過去問が出題されたことがあります。 そのシナリオが出題されて以降、IgA腎症がいわゆるAMCの過去問集の仲間入りをしたわけですが、 それ以降IgA腎症の病態や治療法に関するかなり長い資料が回ってくるようになりました。試験要項に書いてあることをしっかりと理解していれば、IgA腎症の治療は初期研修医の守備範囲外であり、試験では98%出題されないという事はわかるはずです。 自分は実際ちょっとでも専門性が高そうな疾患に関しては、マネジメントは全く勉強しませんでした。医学生最終学年・初期研修レベルのマネジメントと言えば、命に関わる緊急疾患の検査の選択と初期治療薬の選択、後は上級医への確実なコミュニケーションぐらいです。それ以上のマネジメントは基本的には聞かれないという認識でいいと思っています。 もちろん出題される可能性もありますが、繰り返しますが、この試験はAMC曰く医学生最終学年レベルの試験です。わからない事は正直に患者に「ちょっと今は正直覚えていないんだけど、調べて上級生と治療プランを立ててから後から伝えに来るね」と言えばいいだけの話です。実際自分は試験中に大事なマネジメントの一部が緊張で飛んでしまい、この手口を一つのステーションでやりましたが、7点中6点で合格しました。 細かい疾患の病態やマネジメントをひたすら覚えることに労力を使うよりは、身体診察や形を完璧にする方に時間を割いたほうがいいと思います。
4. コミュニケーションスキルを重視しない
受験生の中には時々、病気の取り方や身体診察の仕方、疾患の説明方法などは完璧にできているにもかかわらず、患者に対する情があまりにもなさすぎて、非常に機械的なパフォーマンスをする人たちがいます。一緒に勉強していた人たちの中には、型や鑑別診断、病態や治療法の理解に関しては非常に優秀なのにもかかわらず、実際の試験で点数が伸びず不合格になったことのある人たちが何人もいました。 興味本位でその人たちの得点表を見せてもらったことがあります。 上では偉そうに採点基準を理解しろだの書いている私ですが、自分が採点基準を意識し始めたのはこの得点表を見せてもらってからです。 Clinicalに関してよく理解しておかなければならないのは、この試験には一応の採点基準はあるものの、最終的な合否に関わるグローバルスコアは結局かなり主観的であると言うことです。 これまた試験要項の話ですが、試験要項には非常に明確に「グローバルレーティングはそれぞれのドメインの点数の平均ではない」と記載してあります。これは結局「グローバルレーティングはめっちゃ採点官の主観だよ〜」というのを丁寧に表現しているだけです。 私が見たことのある得点表では、各ドメインで6, 5, 4点だったとしても、グローバルレーティングが3点で不合格と言う得点表は数多く見てきました。実際に自分のスタディーパートナーもそのようなステーションが1つありました。私のスタディーパートナーはAMCにこれはどういうことなんだとメールで抗議をしていましたが、AMCからの返事は「試験要項にある通りグローバルレーティングはドメインの点数の平均ではありません」というかなりそっけないものでした。結局、採点官に気に入られる受験者になるというのは、この試験では実は非常に大切なことです。
と言うわけで自分は一見馬鹿げていると言うふうにも思いますが、必ず入室前にノックをする、入室したらまず試験管に笑顔で自己紹介をして自分からIDを見せる、患者に対する共感のボキャブラリーを増やす、相槌の打ち方のバリエーションを増やす、患者の言うことをしっかりと聞くようにする、などという基本的なコミュニケーションスキルを重視しました。 高得点で合格したステーションが多かったのも、こういうことが背景にあっての事かと思っています。
私の経験だけでは説得力がないかもしれませんので、試験要項をまた引っ張り出すと、試験要項にはこれまた非常に明確に「Clinical試験は知識を試すものではない(知識を問うのはMCQです)」と書いてあります。 「知識のみを試すものではない」というニュアンスかもしれませんが、医師としてのプロフェッショナリズム、患者としっかり向き合うことができるか、患者の要望を聞苦ことができるか、など知識以外の側面も重視されているのは間違いありません。中にはコミュニケーションはClinicalでは重要ではないと主張する人たちもたくさんいますが、はっきり言って大事じゃないわけがないです。
と言うわけで、もはや単行本かという長さのブログになってしまいましたが、自分のClinicalの勉強法と勉強法の注意点をご紹介しました!合格率は2023年現在22%と低めではありますが、 多くの人は一回で受からなくても複数回受験して合格をしている人たちが多いです。 私の友人たちも多くの人が2回目以降で合格しました。
つかみどころがなくて大変な試験ではありますが、このブログがこれから受験する多くの皆さんの背中を押せれば幸いです。
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