オーストラリア医師の労働環境「1年で1ヶ月、、、いや、2ヶ月!?」

こんにちは。
今回は、かつてYoshiがオーストラリアの病院で実習している頃に医師の労働環境について記事を書いたものをこちらのNoteのほうに転載したいと思います。

以下、オーストラリアと日本の医師の労働環境の違いについて(少し情報が古いところもありますし、学生の視点で作成したものなので実情と異なる可能性もありますが)参考になればと思います。

日本の労働環境

まず、日本の医師が平均で一週間どのくらい働いているか。
2016年12月に全国の医師約10万人を対象に行った調査では常勤医師の週当たりの労働時間は平均57時間10分という結果が出ています。

(第2回 医師の働き方改革に関する検討会 資料3 平成29年9月21日作成診療時間:外来診療、入院診療、在宅診療に従事した時間。 診療外時間:教育、研究・自己研修、会議・管理業務等に従事した時間。 待機時間:当直の時間のうち診療時間及び診療外時間以外の時間。)

平日だけ働いているとして、およそ1日11時間くらいですかね。
ちなみに、年齢ごとの週当たり勤務時間60時間以上の病院常勤医師の割合は以下のグラフです。

(同上)

ここでの、一週間で勤務時間60時間というのは過労死ラインと呼ばれる、日本において、健康障害リスクが高まるとする時間外労働時間を指す言葉が元になっています。要は一般的に週当たりの60時間以上の労働は健康によくないということです。(例えば、心筋梗塞のリスクが1.9~2.9倍に上がるとか。内山ら(1992)、Sokejima and Kagamimori (1998)、Liu et al. (2002))

オーストラリアの労働環境

さてさて、一方のオーストラリア。厚労省的存在のAustralian Institute of Health and Welfareによると、2015年の統計では医師の労働時間は週当たり43時間42分。

(Australian Institute of Health and Welfare: Medical practitioners workforce 2015 https://www.aihw.gov.au/reports/workforce/medical-practitioners-workforce-2015/contents/what-types-of-medical-practitioners-are-there)

平日だけ働いているとして、およそ1日8時間半くらい。

比較すると…

計算をしました。

1週間で
57時間10分(オーストラリア)-43時間42分(日本)=13時間28分
1ヶ月で
13時間28分×4=53時間52分
1年で
13時間28分×52=29日4時間16分

1年でほぼ29日、1ヶ月の差。


「1年で1ヶ月、、、」

1年間で労働時間において、1ヶ月分の差がつくのです。これは衝撃でした。
でも確かにここで働く医師は8時に来て、16時半とか17時には帰っているように感じます。
しかもこれは常勤の医師に限らず、Intern(日本でいう初期研修医)もそのくらいに帰っています。
日本での病院の様子からすると驚き。

しかし、さらに衝撃の事実が。


なんと、
オーストラリアの国民は4週間分、つまり20日分の有給休暇をもらうことができるそうです。かつ、国民の休日(10日くらい)も有給休暇として機能しています(Australian Government Fair Work : https://www.fairwork.gov.au/leave/annual-leave)

そして、医師や研修医などが「休みの時に日本に遊びに行く予定!」とも言っていたり、「4週間休みとれるよ」と割と普通に行っていたり、しっかり有給休暇を消化しているようです。
一方、日本では医師はなかなか有給休暇をとれないのが現状です。「MedPeer」という医師専用コミュニケーションサイトでの調査にてその低さが結果としてでています。(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000070.000010134.html)

つまり、、さっきの結果とあわせると、、

「1年で1ヶ月、、、いや、2ヶ月!?」

トータルで1年で1ヶ月から2ヶ月、勤務時間に差があるということです。

30年勤務したら、30ヶ月から60ヶ月。2年から5年くらい差がある。

ちなみに、これはオーストラリアだけではなく、EU圏も同様の勤務時間、有給休暇制度があるみたいです。

EUの国々の医師の勤務時間 (OECD HEALTH WORKING PAPERS: http://www.oecd.org/els/health-systems/35987490.pdf)

このような結果には驚きでしたが、実際に実習しているとオーストラリアの医師の印象は業務にすごく余裕があるように見えます。またこれは医師のみならず看護師も患者も明るくリラックスしているように感じます。
とても明るく楽しく病棟業務をこなしているドクターたちの姿を見ていると、オーストラリアで働くのもとてもいいなあと思っています。


いかがでしょうか。
オーストラリアの病院で実習していた当時、この違いにかなり衝撃を受けた記憶があります。「働かなすぎ、やばすぎる」と最初は思っていましたが、仕事以外に趣味や家族(僕としては研究)などに、多くの時間を割くことができるのは素晴らしいことだと感じるようにもなりました。

仕事以外に自分の時間をしっかり持てる環境、それがオーストラリアの魅力であり、実際にこの当時の経験が今のオーストラリアでの生活に直結しております。

また、実際の病院勤務の様子についてもMarieが投稿してくれると思うのでそちらもぜひ参考にしてみてください。